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トウセキ爺さん行状記 名誉会長 安島 光二 数年前、心内膜炎で緊急入院、様々な検査があり、心内膜炎のほかに腎不全が発見され、人工透析の 必要を告げられた。一生続けなければならない透析に以前から、「透析だけは受けたくない」と思ってい たので、先生に、治療を受けても、受けなくても5 年くらいの命と聞いているので、治療を辞退したい と答えてみた。「医師の立場から辞退は困る」・・・それから3 年。 日本の透析患者数は約30 万人(500 人に1 人)、アメリカに次いで2 番目に多いとのことである。 ところで、透析で大変なのは、治療に当たる医療スタッフであろう。盆も正月もなく、長期の休暇がと れないとぼやいている。しかも、3Kと言われるつらい仕事である。 ほかの国で、日本のように透析環境が整っている国はないそうで、このような社会の恩恵がなければ、 我々透析患者は生きてゆけない。ひたすら感謝である。 透析を受ける場所は、院内に透析センターという治療室があり、午前、午後それぞれ40 人(働いてい る人のために夜間も行っている)、全部で140 人前後の患者が、一日おきで、月水金か火木土に受けてい る。患者は、30 歳代の若い人からで、60 歳代が中心、私は一番年上。糖尿病から腎不全を起こした患者 が約半数。中には壊疽で足を切断した透析患者もいる。糖尿病は命取りだ。 透析の一日 ロッカー室で着替え、ベットシーツと枕に掛けるバスタオルを抱え、待合室に入る。 体重測定 精密な体重計だ。体重測定は、当人の目標体重(ドライウェイトと言っている)から当日の 除水量(1,000〜3,000ml)を決めるために計る。次にベッドに横になり、血圧の測定がある。透析に入 るまでに少し準備時間があるので、ベッドで静かに、待つ。穿刺(せんし)が始まる。透析のための針 刺である。 透析時間は、標準で4 時間。食事など合わせると前後6 時間。この空虚な時間を如何に過ごすかが問 題となる。甥が病気見舞いにプレゼントを置いて行った。ソニーが開発したウォークマン(携帯用音響機 器)である。これは手放せなくなった。小さいし軽い。1 回の充電で3日以上もつ。インターネットで探 し当てた朗読集「しみじみと朗読に聞き入れたい」の中から、日本・世界文学集を選び、好きな作品を タダでパソコンにダウンロードし、ウォークマンに取り込み聞いている。この機器は素晴らしく、音楽 なら3,000 曲収録できるというから驚きである。 飲食の制限 栄養のある食品は透析患者には不向き。食物や水分の制限が厳しく、とくに水分は 食事を含め一回120ccほど(コップ一杯)である。 体調の変化 透析に入った後の体は、体重が20 キロ減少し、骨と皮ばかり、皮下脂肪が薄く なったので、熱くもないお茶椀が持てなくなってしまった。 視力の異常 ベッドの周りのカーテンが薄汚く不潔な感じがしていた。急速に、白内障が進んでいたようである。 ところが白内障の手術が済んで眼帯がとれた途端、薄汚く見えたカーテンは美しいピンク色だった。カ ーテンばかりでなくすべてがモノクロからハイビジョンになった。メガネはすべて作り直し、「車」の運 転は、絶望。運動不足になりがちで、天気の良い日は歩くか、ルームランナーで室内歩行。我が家の一 室は運動器具で占領されている。ルームランナーは結構きつく、6〜7 分の時間が大変長く感じる。 かくて、透析三昧の人生はフラフラ、よれよれ、高いところは禁物。転倒すれば命取り。踏み台は不 要。家中手すりだらけとなった。 昨日またかくてありけり。今日もまたかくてありなん。 6 |