胃がん検診
胃がんは日本人に多いがんで,以前は部位別死亡率の第1位でした。最近は死亡率の低下傾向がみられ,肺がんに次ぐ第2位となっています。死亡率が低下してきた理由としては,検診による早期発見と,治療技術の進歩等が挙げられています。
しかし,胃がんの罹患率は依然として第1位であり,検診による早期発見が益々重要であることがうかがえます。
胃がんの発生
胃がんは胃の粘膜に発生する悪性腫瘍です。胃がんの早期がんと進行がんは,胃壁に対する病巣の深さ(深達度)で診断されます。
検診で見つかる病気
胃がん検診でわかる病気は,なにも胃がんだけではありません。胃X線写真を利用するといろいろと見つかります。胃・十二指腸の炎症や穴が空いてしまう潰瘍,それにポリープやがんなどの異常がないかを調べることができます。
検診の流れ
検診の内容
受診間隔 | 対象者 | 検診内容 |
---|---|---|
年1回 | 40歳以上 | 胃X線検査(最低8枚,追加撮影の場合あり) |
精密検査について
胃がん検診で異常を疑われた場合は,胃内視鏡検査の実施が選択されることになります。内視鏡を口または鼻から通して,胃の内部に挿入し,がんが疑われる場所の広がりや深さを直接見て調べる検査です。がんが疑われる場所の組織の一部を採って,がん細胞の有無を調べる病理検査をすることもあります。検査を受けるには,胃X線検査と同様に,検査当日は食事や水分等の制限が必要となります。検査の際には,内視鏡を飲む際の苦痛を和らげるため,のどの局所麻酔,胃の動きを抑える薬などを使用します。また,医療機関によっては鎮静剤や鎮痛剤の注射を用いることもあります。
以上胃がんの精密検査について簡単に説明しましたが,専門的知識と高度な技術が要求される検査になりますので,精密検査は消化器の専門医師が揃い,検査体制が整った施設で受けることが望ましいといえます。なお,検査の詳細については受診される医療機関の説明をご確認ください。
検診を受ける時の注意
胃X線検査では,胃の粘膜に変化があらわれにくい癌や,病変が骨または十二指腸の影になる部分にあるときなどは,見つけることが困難な場合があります。この検査で「異常なし」と判定されても,病気を100%否定するものではありません。
バリウムによる胃がん検診を受ける場合
この検査を受けることによってアレルギーによる重篤な症状が出たり,バリウムが腸内で固まって腸閉塞を起こしてしまうなどの危険があります。事故防止のため下記の項目に該当する方は,バリウムによる胃がん検診を受けることはできません。かかりつけ医療機関などでの検査(内視鏡など)をお勧めします。
(1) 体調不良を起こす恐れが高い方
・バリウム検査でアレルギー(血圧低下,発汗,発疹,悪心嘔吐など)を
おこしたことがある
・バリウム検査で体調不良をおこしたことがある
・検査当日,頭痛,腹痛,体がだるい,吐き気などの症状がある
・現在,胃や腸の病気で治療中や経過観察中である
・メニエール病,脳室シャントの既往がある
(2) バリウムが気管に入ってしまい呼吸困難・肺炎を起こす恐れが高い方
・過去の検査でバリウムを誤嚥(ごえん:誤って気管へ入ること)したことがある
・脳血管障害などで嚥下(えんげ)障害がある
・酸素吸入治療をしている
(3) 脳卒中や心筋梗塞などの重篤な疾患をまねく恐れが高い方
・当日の血圧が収縮期血圧 180mmHg 以上または拡張期血圧 110mmHg 以上と著しく高い
・1年以内に発作(脳梗塞・くも膜下出血・脳出血・心筋梗塞・狭心症・不整脈)を
起こしたことがある
※ 発作後1年以上で通院中の方は主治医の許可が必要です
(4) バリウムが腸に詰まりやすい方
・腸閉塞・腸捻転・大腸憩室の既住がある
・ひどい便秘症(検査前3日間排便が無い)
・胃を全て切除している,もしくは大腸・小腸の切除をしている
・水分制限がある(心不全や腎不全)
・開腹手術あるいは腹腔鏡手術を合計3回以上している(帝王切開,虫垂炎なども含む)
・透析治療中である
(5) 慢性疾患の悪化の恐れがある方
・重篤な心疾患あるいは肺疾患がある
・状態が不安定な糖尿病がある
(6) 撮影台からの転落の恐れがある,または撮影が困難な方
・手足に麻痺(まひ)がある
・検査のための体位変換(寝返りなど)がよくできない
・認知症などで,指示通りに動くことが困難である
・体重が130kg以上ある(撮影装置の問題から検査できません)
(7) 1年以内に手術した方(胃・腸・頭頸部・心臓・大動脈・肺・脊椎・腕・脚)
・1年以上経過し,通院中の方は主治医の許可が必要です
(8) 毎回結果が「精密検査」に該当している方
(9) 妊娠中または妊娠していると思われる方
以上に該当する方は,バリウムによる胃がん検診を受けることはできません。
注意事項
◆ 検診前夜 | (1)午後8時ごろまでに食事を摂り,それ以降の食事をしないでください。 (2)飲水については,深夜0時頃まではかまいません。 特に,熱中症や脱水症が起きやすい夏季には積極的に飲水してください。 (3)飲酒はなるべく避け,早めに就寝しましょう。 (4)入れ歯安定剤は,検診前夜から使用しないで下さい。 |
◆ 検診当日 | (1)起床後は,検診が終了するまで,水以外の摂取は避けてください。 食事をされた場合,検査は受けられません。 なお,常用しているお薬の服用については,下表を参考にしてください。 【服薬のための飲水はコップ1杯(200ml)程度でお願いします】 (2)集団検診を受診される方は,ボタン,刺繍(ししゅう),金具等のない服装で お願いします。 |
【 表:薬の服用について 】
薬の種類 | 当日の使用 | 方法 |
---|---|---|
糖尿病薬 (血糖降下剤,インスリン) |
× | 絶対に服用しないでください。 (低血糖発作の危険があります) |
その他の常用薬 (血圧・心臓の薬など) |
〇 | 起床直後,コップ1杯程度(200ml)の水で服用してください。また,早めにお願いします。 (血圧・心臓の薬は原則として服用して下さい) |
◆ 授乳中の方へ
検診後に服用する下剤の影響で,乳児に下痢がみられる場合があります。服用後48時間以内は人工乳に切替えるか,検査前に搾乳しておくことをお勧めします。
※ いずれの検診もすでに治療中および経過観察中の方は,医療機関での検査をお勧めいたします。 また,自覚症状のある方,検診結果が毎回「要精密検査」に該当する方も医療機関での検査を受けていただくようお願いいたします。
当協会検診への取り組みについて