検査でわかる病気の詳細

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先天性代謝異常症とは

 食べ物に含まれる栄養素を消化・吸収したり、不用になったものを排泄する「代謝」が、生まれつき正常に出来ないために、様々な症状を起こす病気の事です。これらの病気は、早期発見・治療することが発症の予防につながるため、アメリカやヨーロッパ諸国、日本の一部の地域では、すでにこの検査が行われており、多くの赤ちゃんが早く診断され、助かっています。

新生児マススクリーニング検査の対象疾患

 茨城県の新生児マススクリーニングでは以下の20種類の病気の検査を行っています。

アミノ酸代謝異常症

アミノ酸はタンパク質のもととなる成分です。ある特定のアミノ酸の利用や分解がうまくできずに体内にたまってしまい、精神発達の遅れや重度の体調不良を引き起こします。特定のアミノ酸を除去した特殊ミルクやタンパク制限食といった食事療法を行います。

病気の名称 病気の説明
フェニルケトン尿症 アミノ酸の一つであるフェニルアラニンをチロシンに変換する酵素の欠損により発症する病気です。フェニルアラニンを制限した特殊なミルクや食品を用いたりすることで治療します。早期から治療することで、精神発達が遅れたり、けいれん、皮膚や毛髪の色素欠乏などの症状を未然に防止します。頻度はおよそ6万人に1人です。
メープルシロップ尿症 分岐鎖アミノ酸のロイシン、バリン、イソロイシンから生成されるα-ケト酸の脱炭酸反応を行う酵素の欠損により発症する病気です。早期に特殊ミルクなどの食事療法をベースとした治療を開始しないと、重症の場合、意識障害やけいれんなどを起こして死亡することもあります。きわめて稀な病気です。
ホモシスチン尿症 アミノ酸の一つであるメチオニンの代謝産物であるホモシスチンを変換する酵素の欠損によって発症する病気です。知的障がいや骨格異常、水晶体亜脱臼などが見られ、血栓症で死亡することもあります。きわめて稀な病気です。
シトルリン血症1型 体内の余剰窒素を排出するための尿素サイクルに関連する酵素、アルギニノコハク酸合成酵素(ASS)が欠損しているために、高アンモニア血症を引き起こす疾患です。血中シトルリンが高値となります。
アルギニノコハク酸尿症 体内の余剰窒素を排出するための尿素サイクルに関連する酵素、アルギニノコハク酸リアーゼの欠損により高アンモニア血症を引き起こす疾患です。血中アルギニノコハク酸やシトルリンが高値となります。

有機酸代謝異常症

 有機酸とはアミノ酸が体内で変化してできる物質の総称です。特定の有機酸の代謝がうまくできずに体内に溜り、哺乳不良や嘔吐、けいれんなどを引き起こします。特定のアミノ酸を除去した特殊ミルクやタンパク制限食といった食事療法を行います。

病気の名称 病気の説明
メチルマロン酸血症 アミノ酸が代謝を受ける過程で働くメチルマロニル-CoAムターゼと呼ばれる酵素が欠損しているために、体内にメチルマロン酸が蓄積し、代謝性アシドーシスや高アンモニア血症を引き起こす疾患です。タンパク制限などを行い、発作を起こさないようにコントロールすることが重要です。
プロピオン酸血症 アミノ酸が代謝を受ける過程で働くプロピオニル-CoAカルボキシラーゼと呼ばれる酵素が欠損しているために、体内にプロピオン酸が蓄積し、代謝性アシドーシスや高アンモニア血症を引き起こす疾患です。タンパク制限などを行い、発作を起こさないようにコントロールすることが重要です。
イソ吉草酸血症 ロイシンが代謝を受ける過程で働くイソバレリル-CoA脱水素酵素の異常によって、体内にイソ吉草酸が蓄積し、代謝性アシドーシスや高アンモニア血症が引き起こされる病気です。
メチルクロトニルグリシン尿症 ロイシンが代謝を受ける過程で働く3-メチルクロトニル-CoAカルボキシラーゼが欠損しているために起こる病気です。無症状のまま経過する方もいます。
ヒドロキシメチルグルタル酸(HMG)血症 ロイシンが代謝を受ける過程で働く3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAリアーゼが欠損しているために、飢餓時などにケトン体を産生できずに低血糖発作を引き起こす病気です。
複合カルボキシラーゼ欠損症 ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損またはビオチニダーゼ欠損により引き起こされる病気です。ケトアシドーシスや高アンモニア血症がみられます。ビオチンの大量投与により治療されます。
グルタル酸血症1型 リジンなどのアミノ酸が代謝を受ける過程で働くグルタリル-CoA脱水素酵素が欠損しているために、異常代謝産物のグルタル酸などが体内に蓄積し、筋緊張低下、けいれんなどを引き起こす病気です。

脂肪酸代謝異常症

 空腹時や運動時など、食事からのエネルギーが足りなくなると、体内の脂肪を分解してエネルギーが作り出されます。この過程がうまく働かないためエネルギー不足となり、重度の体調不良を引き起こします。飢餓状態に陥らないよう食事の間隔を短くすることで低血糖発作を起こさないようにします。

病気の名称 病気の説明
中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症 中鎖脂肪酸からエネルギーを作り出す過程で働く中鎖アシル-CoA脱水素酵素が欠損しているために、飢餓状態で低血糖発作を引き起こす病気です。
極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症 極長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出す過程で働く極長鎖アシル-CoA脱水素酵素が欠損しているために、飢餓状態で低血糖発作を引き起こす病気です。心筋や骨格筋などに症状が現れることがあります。
三頭酵素(TFP)/長鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素(LCHAD)欠損症 長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出す過程で働く長鎖-3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素が欠損しているために、飢餓状態で低血糖発作を引き起こす病気です。
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-1(CPT1)欠損症 カル二チンパルミトイルトランスフェラーゼ1という、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に取り込むための酵素が欠損しているために、長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出すことができない病気です。
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-2(CPT2)欠損症 カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2という、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に取り込むための酵素が欠損しているために、長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出すことができない病気です。

糖代謝異常症

病気の名称 病気の説明
ガラクトース血症 ガラクトースやガラクトース-1-リン酸の代謝をつかさどる酵素の障害により発症します。早期に特殊ミルクなどによる食餌療法を開始しないと、白内障や精神運動発達の遅れが現れ、やがて肝硬変などで死亡することがあります。頻度はおよそ30,000人に1人ですが、ただちに治療が必要な重症型はきわめて稀です。

内分泌疾患

病気の名称 病気の説明
先天性甲状腺機能低下症 胎児期からの甲状腺の異常によって、神経の発達や新陳代謝をつかさどる甲状腺ホルモンが正常に分泌されないために発症します。早期にホルモン補充などの適切な治療を開始しないと、回復が難しい身体や知能の発達障がいが残ります。頻度はおよそ3,000人に1人です。
先天性副腎過形成症 副腎皮質ホルモンをつくる酵素の異常から、糖や塩分の代謝と性分化に必要なホルモンの分泌障害により発症します。早期にホルモン補充などの治療を開始しないと、発育不良や女児では外性器の男性化が見られ、重症な場合には脱水などで死亡することもあります。頻度はおよそ15,000人に1人です。
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